[English] [Home] [Topics] [Schedule] [Faculty] [Students] [Text] [Exercise] [Lecture Notes]

神経情報科学サマースクール NISS*99

大脳皮質の情報表現:
分散的/確率的/同期的パターンは,どこから生まれ,何を意味するのか.

NISS logo

1999年8月22日(日)〜27日(金)

神奈川県葉山町 湘南国際村センター

・2000年のサマースクール(NISS2000): http://www.isd.atr.co.jp/nip/niss2000/

・2001年のサマースクール(NISS2001): http://hawaii.aist-nara.ac.jp/NISS/


日本神経回路学会は,脳の情報処理の理解をめざす大学院生・若手研究者を対象に,「神経情報科学サマースクール (NISS*99)」を開催致しました.初回である今年度は,「大脳皮質の情報表現」をテーマに選び,実験系・理論系双方から約70名の応募をいただき,書類選考の結果36名の方に参加いただきました.

スクール期間中は,講議と討論,計算機実習,グループミーティングなど,夜遅くまで非常にハードなスケジュールでしたが, 参加者ひとりひとりの意欲的な取り組みが非常に印象的でした.スクールの様子は,講義録を含めて今後このホームページ上,あるいは他のメディアで紹介して行く予定です.

実験系・理論系の枠を超えた新しい神経科学をめざす今回の試みを成功に導いてくださった,学生,ファカルティ,アドバイザー,スポンサーの皆様に深く感謝致します.

NISS*99 ディレクター 銅谷 賢治



スクール内容

8月22日(日) 神経情報科学の基礎
8月23日(月) 細胞の選択特性と分散表現
8月24日(火) カラム間,領野間の双方向結合と隠れ状態推定
8月25日(水) 単一細胞と局所回路のダイナミクス
8月26日(木) 同期発火とテンポラルコーディング
8月27日(金) 課題発表と総合討論

スケジュール

募集要項(定員30名.5月15日締切)

講師・アドバイザー

参加者

講議テキスト

演習課題

講義録


神経情報科学サマースクール開校にあたって

Dr.Tsukada

 21世紀に向けて、脳研究の新しい次元的展開が期待されている。しかし脳は、総合的、学際的な、研究対象であり、1分野の専門家を養成して達成できる研究対象ではない。研究設備や研究費の充実に加え、この学際的領域を研究する 人材を育てることが最も緊急かつ不可欠な大事業である。
 脳研究の理論と実験の領域を理解し、思想を持って研究する若手研究者を育 成することが、このサマースクールの目的である。理論は理論の内に閉じるのではなく、実際の実験を通して新しい理論の創造と展開をすることが必要である。このサマースクールを受ける若手研究者に来る21世紀に脳研究を通して人類のために役立つ研究を期待する。

校長 塚田 稔
(日本神経回路学会・会長,玉川大学)


Dr.Fujii 日本神経回路学会は、本年から“神経情報科学サマースクール”を開校いたします。会長・塚田稔先生の情熱と発案によって、開校に漕ぎ着けることがで きたこの学校は、日本神経回路学会という(やや狭い)枠組みを超えて、これからの日本のニューロサイエンスを担う若者のために開放します。
 この神経情報科学サマースクールは、ヨーロッパではすでに3回開かれてい るクレタ島のCrete Course in Computational Neuroscienceがモデルではあ りますが、この企画に携わっているアドバイザーやファカルティ一同のこの“サマースクール”にかける思いは、より一層切実だ とおもいます。それは、 わが国の大学においてNeuroscience Department、あるいは、そのような<概念>に基づいた学科が存在しないために、体系的な教育を受ける機会がないと いう状況を一歩でもよくしたいというと ころからきています。
 また、この“神経情報科学サマースクール”で目標とする研究者像は、<理論を分かって、実験をやる人>であり、また<実験を分かって、理論をやるひと>という新しいタイプの研究者です。その意味でこのサマースクールでは、理論系と実験系の両方からの若者に参加してもらえることを期待しています。また、講師陣もその両分野から招きます。
 クレタ島では、その期間中にNEURONや、GENESISなどのシミュレーター実 習をふくむ1ヶ月も続く本格的なサマースクールですが、われわれも近い将来には(できれば、来年度から)、神経生理学や光学的記録などの実験系と、理 論・シミュレ−ション系の両方の研究室のご協力を得て、Extension Courseを 持つ構想を練っています。これは、いわば仮想的な Neuroscience Department に当たるものです(今年の参加者にもこのExtension Course への参加資格を 認めようと考えています)。
Dr.Aertsen 講師陣の一人として、今年はドイツ Freiburg 大学からAd Aertsen 教授を招いています。この機会に、積極的に議論を挑まれることを期待しています。

プロデューサー 藤井 宏
(日本神経回路学会・理事,京都産業大学)



K.Doya  今年初めて神経回路学会の理事になり、いきなり塚田会長から仰せつかった のが「若手チュートリアル企画担当」ということだったのだが、実はこういっ たサマースクールをやりたい/やらねばという話は、しばらく前から同世代の 研究仲間ではくすぶっていたところであった。
 ご存じの通り、日本は脳研究に未来を託すのだ!というイニシアティブのも と、理研の脳総研をはじめ重点的な投資により、脳研究の環境は格段に改善さ れた。ところが一方、そこで実際に先進的な研究を進めて行くべき人材を育てる環境は、全くといって良いほど改善されていない。脳の計算理論に関して言 えば、この分野を引っ張って来た先生方が次々に大学を退官され、かえって拠 点となる研究室は減って来ているというのが現状である。
 言うまでもなく脳の情報処理の研究は非常に学際的な分野であり、既存の学 部組織にとらわれた形では総合的な教育プログラムは作れない。海外では、 MITのBrain and Cognitive Sciences、CaltechのComputation and Neural Systems をはじめとして、各大学が競って実験と理論の両方を含む神経科学の大学院プログラムを創設し、確かな知識と新鮮な感覚に溢れた人材を輩出しているのに 比べ、日本の現状はなんとも心もとない。
 しかし嘆いているだけではしょうがないし、だいたいお前のように本来大学 で全体の奉仕者として仕えているべき世代の者が、恵まれた研究機関で好き勝 手しているからいけないのだと言われては立つ瀬がない、という矢先に塚田会長から声がかかり、藤井氏と一緒に走り始めたというわけである。
 本来ならば3週間くらいかけて、神経生物学と計算理論の両面を、実験を含 めて基礎から最近の話題までカバーする内容にしたいところだが、まだその組 織も予算もない状況で、今回はとりあえず期間は6日間、テーマも絞り込んで行うことにした。テーマ設定にあたっては、多分に藤井氏と私の関心の接点と いう関係で、ポピュレーションコーディングとテンポラルコーディングという コンセプトを、最近の実験データと、統計と力学系の理論による解析とすり合わせる形で検証する、という設定にした。
 内容的には、この分野での実験、理論両方の先端的な研究者による講義とディ スカッション、また、小グループでオリジナルペーパーを読んだり、データ解 析やモデルのシミュレーションを、各自のノートパソコン上で走らせたりという形で、単に聴いて帰るというのではなく、自ら参加して作り上げるという要 素を重視している。また講師陣にも、完成された枠組について解説するだけで なく、今何が未解決の問題なのか、どんなアプローチが必要なのかを提起してもらう予定である。
 わかり易くするために本当に面白い先端部分をカットするのはいかん!とい う藤井流の考え方を採用し、結果的にかなりハードなカリキュラムで、入りた ての院生にとっては、おそらく予習に1週間、復習に1週間くらいかかる内容ではないかと思っている。しかし、脳の情報処理の解明に自分の将来を賭けて みようという者にとっては、ハードにトライしてみるに値する内容になるはず である。
 また、せっかくこれだけの優れた研究者に集まってもらい、総合的な講義と 討論が行えるのだから、これを何とか記録に残しておきたい。ということで、 各参加者が1コマずつ分担して講義録を作り、Web上で、あるいはハードコピーで公開するという方向を模索している。
 予算もほとんどない中、ファカルティの皆さんにはかなり無理を言って時間 を割き知恵を絞ってもらっているが、それだけに手作りの充実した内容になる はずであり、意欲的な若手の皆さんの参加を楽しみにしています。

ディレクター 銅谷 賢治
(日本神経回路学会・理事,科学技術振興事業団)


[English] [Home] [Topics] [Schedule] [Faculty] [Students][Text] [Exercise] [Lecture Notes]
e-mail: niss99@erato.atr.co.jp
http://www.kawato.jst.go.jp/doya/niss99