日本神経回路学会は,脳の情報処理の理解をめざす大学院生・若手研究者を対象に,「神経情報科学サマースクール (NISS*99)」を開催致しました.初回である今年度は,「大脳皮質の情報表現」をテーマに選び,実験系・理論系双方から約70名の応募をいただき,書類選考の結果36名の方に参加いただきました.
スクール期間中は,講議と討論,計算機実習,グループミーティングなど,夜遅くまで非常にハードなスケジュールでしたが, 参加者ひとりひとりの意欲的な取り組みが非常に印象的でした.スクールの様子は,講義録を含めて今後このホームページ上,あるいは他のメディアで紹介して行く予定です.
実験系・理論系の枠を超えた新しい神経科学をめざす今回の試みを成功に導いてくださった,学生,ファカルティ,アドバイザー,スポンサーの皆様に深く感謝致します.
NISS*99 ディレクター 銅谷 賢治
8月22日(日) 神経情報科学の基礎
8月23日(月) 細胞の選択特性と分散表現
8月24日(火) カラム間,領野間の双方向結合と隠れ状態推定
8月25日(水) 単一細胞と局所回路のダイナミクス
8月26日(木) 同期発火とテンポラルコーディング
8月27日(金) 課題発表と総合討論
募集要項(定員30名.5月15日締切)
21世紀に向けて、脳研究の新しい次元的展開が期待されている。しかし脳は、総合的、学際的な、研究対象であり、1分野の専門家を養成して達成できる研究対象ではない。研究設備や研究費の充実に加え、この学際的領域を研究する
人材を育てることが最も緊急かつ不可欠な大事業である。
脳研究の理論と実験の領域を理解し、思想を持って研究する若手研究者を育 成することが、このサマースクールの目的である。理論は理論の内に閉じるのではなく、実際の実験を通して新しい理論の創造と展開をすることが必要である。このサマースクールを受ける若手研究者に来る21世紀に脳研究を通して人類のために役立つ研究を期待する。
日本神経回路学会は、本年から“神経情報科学サマースクール”を開校いたします。会長・塚田稔先生の情熱と発案によって、開校に漕ぎ着けることがで
きたこの学校は、日本神経回路学会という(やや狭い)枠組みを超えて、これからの日本のニューロサイエンスを担う若者のために開放します。
この神経情報科学サマースクールは、ヨーロッパではすでに3回開かれてい るクレタ島のCrete Course in Computational Neuroscienceがモデルではあ
りますが、この企画に携わっているアドバイザーやファカルティ一同のこの“サマースクール”にかける思いは、より一層切実だ とおもいます。それは、 わが国の大学においてNeuroscience
Department、あるいは、そのような<概念>に基づいた学科が存在しないために、体系的な教育を受ける機会がないと いう状況を一歩でもよくしたいというと
ころからきています。
また、この“神経情報科学サマースクール”で目標とする研究者像は、<理論を分かって、実験をやる人>であり、また<実験を分かって、理論をやるひと>という新しいタイプの研究者です。その意味でこのサマースクールでは、理論系と実験系の両方からの若者に参加してもらえることを期待しています。また、講師陣もその両分野から招きます。
クレタ島では、その期間中にNEURONや、GENESISなどのシミュレーター実 習をふくむ1ヶ月も続く本格的なサマースクールですが、われわれも近い将来には(できれば、来年度から)、神経生理学や光学的記録などの実験系と、理
論・シミュレ−ション系の両方の研究室のご協力を得て、Extension Courseを 持つ構想を練っています。これは、いわば仮想的な Neuroscience
Department に当たるものです(今年の参加者にもこのExtension Course への参加資格を 認めようと考えています)。
講師陣の一人として、今年はドイツ
Freiburg 大学からAd Aertsen 教授を招いています。この機会に、積極的に議論を挑まれることを期待しています。
プロデューサー 藤井 宏
(日本神経回路学会・理事,京都産業大学)
ディレクター 銅谷 賢治
(日本神経回路学会・理事,科学技術振興事業団)
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e-mail: niss99@erato.atr.co.jp
http://www.kawato.jst.go.jp/doya/niss99