受賞報告

渡邊武郎招聘客員室長が、日本心理学会国際賞特別賞を

授賞することとなりました。

ブラウン大学終身栄誉学部長、ATRの客員招聘室長である渡邊武郎先生が、日本心理学会国際賞特別賞を授賞されることとなりました。授賞式は、日本心理学会第82回大会の前日9月24日に行われるプレスコンベンション学術交流会において、国際賞特別賞受賞講演は日本心理学会大会において9月27日に、 執り行われます。日本心理学会国際賞は国際的に特段に優れた業績をあげ、日本の心理学の発展に寄与された心理学者に与えられるもので、国内の心理学界において最も栄誉ある賞です。歴代の受賞者を見ても、世界を代表する日本の心理学者が並んでいます。

この機会に、渡邊教授のこれまでの研究成果をご紹介したい思います。

渡邊武郞教授は、学生の頃から、国際誌に論文を掲載し、世界にその名前を馳せてきました。専門は、知覚学習であり、世界をリードする業績を出し続けてきました。渡邊教授がこれまでの研究業績である124本の論文の中で、3本のNature、2本のScienceを含め、37本がハイインパクト雑誌であり、これは世界の心理学者で数人しか達成していない特筆すべき快挙です。

その中でも、心理学への大きな貢献の一つとして、知覚学習を知覚心理学の根幹の研究分野としたことを挙げたいと思います。2001、2003年には、ともにNature誌において、 閾値下の刺激を受動的に提示するだけで知覚学習が起こることを世界で初めて示しました。この研究以降、知覚学習に関する論文数は飛躍的に増大し、同研究分野に大きな影響を与えました。2009年に、動物の学習においては極めて重要であるにもかかわらず、ヒトの知覚研究において顧みられなかった報酬の効果が、知覚学習に決定的な役割をすることを発見しました。この研究は、人間の知覚研究においてシステマティックに報酬の役割を示した初めての論文と考えられており、その後多くの研究者が、報酬の知覚過程全般に及ぼす効果について研究するようになりました。

2016年には、ブラウン大学佐々木由香准教授(現教授)との共同研究により、知覚学習における睡眠の効果についての研究の一端において、ヒトの睡眠の新しい側面を発見しました。 同論文は社会的影響力を示すaltmetric scoreで、同年世界中で出された全ての生物学系の論文の中で4位、全ての科学論文のうち27位にランクされるなど、心理学分野を超え、学術界に多大な貢献と影響を与えてきました。

これら一連の研究成果は、ニューヨーク・タイムズ、Times, BBC、ルモンド、フランクフルター アルゲマイネ、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、サイエンティフィックアメリカンをはじめ世界中の新聞やNatureやScience等の多くの科学雑誌でニュースとして取り上げられ、世界中の知るところとなっています。

2012年には、アメリカで最も権威ある大学の一つのブラウン大学の教授として、Graham教授やRiggs教授がディレクターを歴任し、数多くの視覚科学の指導者を輩出した講座を引き継がれ、その後、着任2年にして、所属学部で二人目(一人目は元学長)の 栄誉特別教授/学部長の称号を付与されています。一方で、ATR脳情報通信総合研究所に新たに創設された行動変容室招聘室長を2012年より併任し、また知覚学習における研究によりパリ大学で招聘教授の就任要請を受け、ブラウン大学と兼任し、活躍の場を広げています。

ATRにおいては、2011年に川人らとの共同研究においてDecoded fMRI Neurofeedback(DecNef)を開発し、Science、Current Biologyを初めとするインパクトの高い論文を多数出版しATRの世界的な地位向上に貢献頂きました。今後も、ATRへのさらなるご指導を頂くと共に、楽しく刺激的な共同研究を推進できればと考えております。