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ニューロサイエンスからニューロエンジニアリングへ
〜 NHK番組「サイボーグ技術が人類を変える」の取材で知った脳科学の世界の革命的変化 〜

2006年4月4日
立花 隆

立花先生は、脳科学をベースにしたサイボーグ技術が私たちの想像している以上に進んでいること、また、その技術が今後も凄い勢いで革命的に進んでいくことを予感させる話をして下さった。

取材でアメリカ・ヨーロッパ・日本のサイボーグ技術を見てきた立花先生は、それまではSFの世界だと思っていた世界が現実にあることに非常にショックを受ける。また、それらのサイボーグ技術が、基礎科学であるニューロサイエンスと工学技術を融合させた研究分野であるニューロエンジニアリングであることも驚きだったようだ。ニューロエンジニアリングが応用技術として私たちの生活に入ってくるのも近いということだ。

立花先生はこれらの革新的技術のキーワードとして、BMI(BCI)とDBSをあげ、講演ではBMIを中心に話を進められた(DBSについては片山先生の講演を参照)。現在、BMIの中でもニューラル・プロセティック・インターフェース(Neural Prosthetic Interfaces, 神経接続による人体修復)が非常に多く研究されており、これらの研究を大きくわけるとモーター・コントロール(Motor Control)とセンサリ・パーセプション(Sensory Perception)がある。

センサリ・パーセプションの実例は人工内耳と人工眼があり、人工内耳はすでに20年以上の長い歴史がある。音の振動を電気信号に変換し、聴神経を刺激するという仕組みで、半年から数年の訓練が必要とはいえ、わずか22チャンネルの電気信号で音が聞こえるようになる。また最近では人工眼に関する研究も進んでいて、100画素から1000画素の解像度をもつものも近い将来の話だそうだ。
モーター・コントロールの例は多く、実際に手を動かす神経からの情報を筋肉を介して読み取りロボットアームを動かすものから、脳内の神経細胞からの情報を直接とりだしてカーソルをコントロールするものまである。
花先生は、これらの研究領域のマーケットは年々大きくなっており、今後、応用範囲の非常に広いこの分野のマーケットは兆の単位になるのは殆ど確実であると言われた。また、日本はニューロサイエンスでは進んでいるが、このニューロエンジニアリングという分野では遅れていると指摘する。

更に、立花先生はこの分野のこれからについて海馬チップを開発しているバーガー教授の例をあげて話された。バーガー教授は脳の海馬を模したチップで脳の部位そのものを人工的なパーツで置き換えようということをしており、著書で基本はバイオミメティックであると言っている。つまり生物世界で現に起きていることを情報系としてそのまま真似した人工物で置き換えていくということが、いろんな領域で行われていく。
つまり、今までのニューラル・プロセティック(神経工学を利用した人工器官)だけではなく、脳の部位そのものを人工部品と置き換えようという方向も生まれ、サイボーグ技術は更に社会に入ってくるということだそうだ。

関連リンク

SCI (サイ) - サイボーグ技術が人類を変える

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Last update: 2006.05.29

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