脳活動計測データシミュレータ

ヒト脳研究の分野では、fMRI/MEG/EEG/NIRSと計測方法ごとにコミュニティがあり、コミュニティ間の連携が必ずしも円滑ではありません。CBIでは、これら4つの脳計測データを予測するシミュレータを構築することによって、ある脳計測によって得た結果を統合的に理解する枠組みを提供をすることを試みています。

電流源推定法やダイナミクス推定法は、計測データから脳活動メカニズムを解明するための方法論ですが、推定した脳活動メカニズムから計測データを予測するのがシミュレータです。ダイナミクスモデル推定の方法論とMEG/EEG/fMRI/NIRSの計測モデルを組み合わせて、ある実験条件下のそれぞれの計測データを予測します。

outline of dyanmics simulator

T1-MRIとdiffusion MRIデータから作成した個人脳モデルとMEG+EEG同時計測データ+fMRIデータをもとに電流活動推定および脳ダイナミクス推定を行い、電流活動に計測モデルを適用することによって、4種類の脳計測データMEG/EEG/fMRI/NIRSデータを生成する脳活動計測シミュレータを作成しました。下の動画は顔知覚時にMEG/EEG/fMRI/NIRSで観測される脳計測データをシミュレートしたものです(MEG,EEGは学習データとテストデータは異なる日に計測したデータを用いています)。個人脳・定量評価可能な精度をもつシミュレータとしては世界初の成果となります。

現在のシミュレータは同一個人の脳活動データを元にしていますが、データベースから脳活動と脳構造の関係性をモデル化をすすめることにより、必要なデータを減らしつつ個別性を考慮に入れた利用しやすいシミュレータが作成できるかもしれません。シミュレータができれば、実験–>解析–>予測–>実験–>  のサイクルにより、コストの高い脳計測実験の効率を格段に向上させることができます。また、ダイナミクスモデルのパラメータをシミュレータ上で操作することにより、損傷部位の影響などもシミュレーション可能になり、臨床応用へと繋がることも期待されます。

この研究は 情報通信研究機構の委託研究「脳活動推定技術高度化のための測定結果推定システムに向けたモデリング手法の研究開発」(2013~2017年度)として実施しました。